Skip to content
体重管理

GLP-1で代謝は壊れる?やめたら全部戻る?——臨床試験が測ったこと

「この注射で代謝が壊れて、やめたら全部リバウンドする」。一番こわいこの噂を、臨床試験が実際に測った数字と突き合わせます。落ちたのは代謝ではなく、食べる量。でも筋肉は守る必要があります。

28 min read

本記事は情報提供およびライフスタイル参考を目的としており、医学的助言ではありません。健康に関する判断は医療専門家にご相談ください。

GLP-1で代謝は壊れる?やめたら全部戻る?——臨床試験が測ったこと

BlueShotでGLP-1管理を始めよう

App StoreGoogle Play

夜中にスマホで「GLP-1 代謝 壊れる」と検索してしまう

注射を始めて2か月くらいたったころ、急にこわくなる。よくある展開です。

きっかけはたいてい、誰かのひとことです。「それ、やめたら全部戻るらしいよ。代謝が壊れるんだって」。

その日の夜、布団のなかでスマホを握りしめて検索することになります。「GLP-1 やめたら リバウンド」「基礎代謝 落ちる 痩せ薬」。出てくるのはこわい話ばかりで、そのまま眠れなくなる。

体重が順調に減っているぶん、よけいに不安になります。せっかく軽くなった体が、代わりに何か大事なものを壊しているんじゃないか。借金して買った服みたいに、あとで利子をつけて返すことになるんじゃないか。そんな感覚です。

頭のなかでぐるぐるする不安は、だいたいこの3つに集約されます。

「やめたら全部戻るなら、この薬は代謝を永久に壊したんじゃないか」 「前より食べてないのに止まってきた。これって代謝が落ちた証拠?」 「減った分が全部筋肉だったら、代謝もいっしょに崩れていくのでは」

結論から言うと、ここには大きな勘違いがあります。多くの人がはまる勘違いです。臨床試験が実際に何を測ったのかを一つずつ並べていくと、頭のなかが整理できます。その整理を、できるだけそのまま書きます。

そもそも「代謝が落ちる」って何の話?

まず、ことばの整理から。ここでつまずくと全部こんがらがります。

「代謝」とふだん呼んでいるものの大部分は、安静時代謝率です。基礎代謝量とほぼ同じ意味で、何もしなくても呼吸や心臓、内臓を動かすために燃えるエネルギーのこと。1日の消費カロリーの、いちばん大きな土台です。

ここが大事なポイント。この土台は、体が小さくなれば自然にいくらか下がります。

たとえば体重が10キロ減れば、動かす体そのものが軽くなります。維持にかかる燃料も減る。だから総量としての安静時代謝が少し下がるのは、壊れたのではなく、ただの引き算です。

多くの人が混乱するのは、まさにここです。体重計の数字(体全体)と、代謝量を、ひとかたまりで読んでしまう。「体重が減った、代謝も下がった、ほら壊れてる」と。

でも研究者が本当に知りたいのは別の質問です。「体が小さくなったぶんを差し引いても、なお代謝が余計に落ちているか?」。これを調べるのが、除脂肪量で補正した代謝という考え方です。筋肉や臓器の量がそろえば、エンジンそのものの効率を比べられます。

車で考えると分かりやすいです。小さい車は大きい車より燃料を食いません。でもそれは車体が小さいからで、エンジンが故障したわけじゃない。「壊れた」とおびえてしまうものの正体は、要するに「車が小さくなった」という話でした。本当に知りたいのは、同じ大きさの車で並べたとき、燃費そのものが落ちているか。除脂肪量での補正は、この「同じ大きさで並べる」作業にあたります。

みんなが心のなかで思い浮かべている「あの断食」

実は、この不安の正体は薬ではありません。多くの人が頭のなかで重ねているのは、昔やったきつい食事制限の記憶です。

ほとんど食べずに一気に落とす。最初はストンと減るのに、ある日ぴたっと止まる。やめたら倍返しで戻る。あの感覚です。

体を飢餓だと感じるほどカロリーを切りつめると、体は省エネモードに入ります。体格の引き算で説明がつく以上に、安静時代謝が下がっていく。これは適応性熱産生と呼ばれる、ちゃんと記録のある生理現象です。体が「燃やす量」をしぼって生き延びようとするわけです。

苦い記憶を持っている人は多いはずです。ほぼ食べないダイエットで、たしかに数字は落ちた。でも常に寒くて、髪は抜けて、いつもぼんやりしていた。やめたとたん、するすると戻った。あの体験が体にしみついているから、薬にも同じ影をかぶせてしまいます。

だから「痩せ薬も同じでしょ」と思ってしまう。その気持ちはとても自然です。

でも、ここからが本題です。GLP-1の薬を使っている「最中」に何が起きているかは、別々に測られていました。クラッシュダイエットの記憶を、そのまま薬にあてはめる必要はなかったんです。

試験が薬を飲んでいる最中に実際に測ったもの

ここで空気が変わる研究があります。

肥満のある成人30人を対象にした、ランダム化・二重盲検・プラセボ対照のクロスオーバー試験。週1回のセマグルチドを12週間かけて1.0mgまで増やし、安静時代謝率を測りました。

結果は、こうです。たしかにセマグルチドのときのほうが安静時代謝は低く見えました。でも、除脂肪量で補正すると、薬とプラセボの差は統計的に意味のある差ではありませんでした(P=0.0704)。

つまり、エンジンの効率そのものが余計に落ちていた、とは言えなかった。研究者はこう推論しています。安静時代謝が上がっていない以上、体重が減ったのはおそらく、食べる量が減ったから。

その「食べる量」も数字で出ています。自由に食べてよい食事をぜんぶ合わせると、総エネルギー摂取はプラセボより約24%低かった。

ここがいちばん腑に落ちるところです。体重計の数字が下がる動力は、燃やすエンジンが壊れたことではなく、入ってくる量が約24%減ったこと。「代謝が壊れた」ではなく「自然と食べる量が減った」。同じ体重の落ち方でも、意味がまるで違います。

しかもこの試験では、参加者に我慢を強いたわけではありません。自由に食べていいと言われたうえで、摂取量が自然と減っていた。「半分くらいで箸が止まる」「前なら平らげていたランチが、なぜか残せる」——そういう感覚は、意志の力ではなく食欲そのものが静かになった結果だと考えると、数字とも合います。

ひとつ正直に添えておきます。この代謝のデータは、30人・12週間・1.0mgという小さな試験のもの。肥満症の体重管理で使う量より低い用量です。だから「決定版」ではなく「強めのヒント」くらいに読むのがフェアです。この点はあとでもう一度ふれます。

規制当局も、平たいことばで同じことを書いている

研究者だけの推論ではありません。お役所の文書にも書いてあります。

セマグルチド(ウゴービ)の米国FDAの添付文書には、こう記されています。この薬は除脂肪量よりも脂肪量を多く減らして体重を下げる。そして、カロリー摂取を減らし、その作用はおそらく食欲を介している、と。

規制当局がはっきり言っているのは、体重が減る理由は「代謝を無理に上げたから」ではなく「食べる量が減ったから」ということ。

この一文は、けっこう効きます。添付文書は宣伝ではなく、効きめも限界も淡々と書く文書です。その文書が、わざわざ「脂肪のほうを多く減らす」「食欲を介して食べる量を減らす」と明記している。夜中の検索で出てくる「代謝が壊れる」というストーリーとは、向いている方向がそもそも違います。

ここで国内の事情をひとつ。FDA承認とPMDA(国内)承認は別物です。糖尿病で使うブランド(オゼンピックやリベルサス)は、糖尿病の治療なら保険がききます。肥満症で承認されているウゴービも、基準を満たせば保険適用になります。ただしBMIなどの条件はかなり厳しめ。いっぽうで、美容やダイエット目的の自費使用は、どのブランドでも原則として自由診療です。自由診療の費用は、クリニックや薬・用量によって幅が大きめ。月数万円規模が一つの目安です。海外の添付文書はあくまで参考。実際に使うかどうかは、必ず医師と相談してください。

では筋肉は減らないのか——ここは別の話

ここまで読むと安心しすぎてしまうので、こわい部分もきちんと書きます。これを飛ばすのはフェアじゃないので。

絶対量で見れば、筋肉などの除脂肪は実際に減ります。これは事実です。

チルゼパチド(マンジャロ)のSURMOUNT-1という試験の体組成分析を見てみます。72週の時点で、脂肪量は33.9%減りました(プラセボは8.2%減)。いっぽうで除脂肪量も10.9%減っています(プラセボは2.6%減)。

ポイントは、減った中身の内訳です。チルゼパチドで落ちた体重のうち、74%が脂肪・26%が除脂肪でした。これはプラセボの内訳(脂肪75%・除脂肪25%)とほぼ同じ。薬が、損失を筋肉のほうに偏らせていたわけではないんです。

体組成の変化(SURMOUNT-1・72週)チルゼパチドプラセボ
脂肪量の変化−33.9%−8.2%
除脂肪量の変化−10.9%−2.6%
減った体重の内訳(脂肪/除脂肪)74% / 26%75% / 25%

セマグルチドの試験(STEP 1の体組成サブ解析)も、正直な重しになります。除脂肪は絶対量で9.7%減りました。減るものは減る。

でも、体全体に占める除脂肪の「割合」は、むしろ3.0ポイント増えていました。脂肪量は19.3%減、内臓脂肪は27.4%減。だから体組成というレンズで見ると、全体としては良くなっている。しかも、たくさん減った人ほど、除脂肪と脂肪のバランスの改善は大きい傾向でした。

体組成への影響(STEP 1)セマグルチドでの変化
除脂肪量(絶対量)−9.7%
体重に占める除脂肪の割合+3.0ポイント
脂肪量−19.3%
内臓脂肪−27.4%

矛盾しているようで、していません。絶対量の筋肉は減る。でも質としての体組成は良くなる。両方ほんとうです。

ここがいちばん勘違いされやすいところだと思います。「筋肉が減る」と聞くと、全部が悪いニュースに思えてしまう。でも体重そのものが大きく減れば、それを支えていた筋肉が多少減るのは自然なこと。問題は「割合まで悪くなるか」で、そこはむしろ改善していた。怖がるべきは「減ること」ではなく「偏って減ること」で、データを見るかぎり偏ってはいませんでした。

で、実際に手を打っておきたいこと

※ここからは日常の工夫の話です。効果や感じ方には個人差があります。

数字を整理すると、不安はかなり静まります。でも「絶対量の除脂肪は減る」という事実は残る。だから手は打っておきたい。といっても、特別なことは要りません。

ひとつめは、筋トレ。週に2〜3回、自宅で自重とゴムチューブだけで十分です。スクワット、腕立て、軽いローイング。ジムに通えない日も、これなら続きます。筋肉に「まだ使うよ」と合図を送るのが目的です。

最初は10分でかまいません。完璧にやろうとすると続かないので、ハードルはわざと低くしておく。テレビを見ながらスクワットを15回、歯みがきのあいだにかかと上げ。それくらいの軽さでも、「使われている筋肉は手放されにくい」という方向に働いてくれます。減量中の体は、使わない部分から省いていく。だから日々ちょっとでも使っておく、という発想です。

ふたつめは、たんぱく質を意識すること。食欲がしぼむぶん、油断すると一日の総量がするっと減ります。毎食に手のひら1枚ぶんのたんぱく源を置く。卵、鶏むね、豆腐、ギリシャヨーグルト。地味ですが、これが効きます。

ここ、けっこう見落としがちです。薬を使うと「お腹がすかない=食べなくていい」と感じます。でも筋肉の材料まで足りなくなると、守りたい除脂肪を自分から手放すことになりかねない。「食欲はなくても、たんぱく質だけは入れる」を合言葉にしておくと迷いません。食べきれない日は、量を減らしてでも先にたんぱく源から箸をつける。それだけでだいぶ違います。

このあたりは別の記事で深掘りしているので、興味があればGLP-1中の筋肉を守る運動ガイドと、GLP-1と筋肉量についてのエビデンス整理もどうぞ。

3つめ。これは行動というより心構えです。体重計の数字に一喜一憂しないこと。落ちたのは「食べる量」が減ったから。減った中身の多くは脂肪。この2つを思い出すと、止まった日にも慌てずにすみます。

念のため。用量をどうするか、自分の体にこのやり方が合うかは、人によって違います。そこは自己判断ではなく、かかりつけの医師と一緒に決めてください。

小さな注釈——ひとつの研究で決めつけない

いいことばかり書くのはフェアじゃないので、研究のサイズの話も。

安静時代謝のデータは、さきほども書いたとおり30人・12週間・1.0mgの小さな試験のものです。体重管理で使う量より低い。だから「薬では代謝が落ちない」と言い切ることはできません。

正確に言えるのは、「除脂肪量で補正すると、この試験では薬とプラセボの差ははっきりしなかった」というところまで。範囲のある言い方ですが、これが誠実な線です。

そして、この小ささこそが、筋トレとたんぱく質をだいじにする理由でもあります。データに余白があるなら、自分でできることで筋肉を守っておく。それだけの話です。

論文を並べて見えてくるのは、こわい主張ほど一度立ち止まる価値がある、ということでした。「代謝が壊れる」も「代謝は絶対に落ちない」も、どちらも言いすぎです。前者は不安をあおる言い方、後者は安心させすぎる言い方。本当のところは、その真ん中にあります。

試験で測れた範囲はここまで。まだ分かっていないのはここから。この線引きを自分のなかに持っておくと、次に新しい情報が来ても、いちいち振り回されずにすみます。

ちなみに、検索でよく見る「止まってきた」「やめたら戻る」は、この記事とは別の話です。停滞期の対処は体重が止まったときのGLP-1停滞期ガイドに、やめたあとに何が起きるかはGLP-1をやめると体重はどうなるかにまとめてあります。この記事はあくまで「使っている最中」の代謝の話です。

よくある質問

Q. 薬を使っている最中、基礎代謝はガクッと落ちますか?

体が小さくなるぶん、総量としての安静時代謝は少し下がります。ただし除脂肪量で補正すると、ある試験では薬とプラセボの差ははっきりしませんでした(P=0.0704)。体格の引き算で説明がつく範囲、というのが今のところの読み方です。

Q. 体重が減るのは代謝が上がるからですか?

逆です。安静時代謝は上がっていませんでした。同じ試験で総エネルギー摂取がプラセボより約24%低く、FDAの添付文書も「カロリー摂取が減り、その作用は食欲を介する」と書いています。動力は「食べる量が減ること」です。

Q. 減ったぶんは全部筋肉、ということはありますか?

いいえ。SURMOUNT-1では、落ちた体重の74%が脂肪・26%が除脂肪でした。プラセボの75%/25%とほぼ同じ。脂肪量は33.9%減、除脂肪量は10.9%減で、減ったものの多くは脂肪です。

Q. それでも筋肉は減るんですよね?

絶対量では減ります。STEP 1で除脂肪は9.7%減りました。ただし体重に占める割合はむしろ3.0ポイント増。だから筋トレとたんぱく質で、減る筋肉をできるだけ守るのが現実的です。

体重計が止まった日に、思い出したいこと

眠れなかった夜と今とで変わるのは、数字ではなく読み方です。

体重計の数字が下がったのは、代謝が壊れたからじゃない。食べる量が自然と減ったから。そして減った中身の多くは脂肪で、代謝に大事な除脂肪は割合としてむしろ守られていた。ここまでは、数字が支えてくれます。

ただし絶対量の筋肉は減る。だから油断はしない。週に数回のかんたんな筋トレと、毎食のたんぱく質。必要なのは、本当にそれだけです。

眠れない夜のまんなかにいる人へ一言だけ渡せるとしたら、「こわい話を一個まるごと信じる前に、それが何を測った話なのか確かめてみて」でしょうか。「やめたら戻る」も「代謝が落ちる」も、まったくの嘘ではありません。でも、使っている最中の代謝の話と、やめたあとの体重の話と、筋肉の話は、それぞれ別の引き出しに入っています。ぜんぶ一緒くたにすると、必要以上にこわくなる。引き出しを分けて見るだけで、ずいぶん落ち着けます。

数字に一喜一憂している人に声をかけるなら——「止まった日も、壊れたわけじゃないよ」。

ここに書いたのは、公開されている臨床試験や学術論文をもとにした情報です。効果や感じ方には個人差があるので、自分の治療や用量については必ず医師に相談してくださいね。

参考文献

本記事の事実に関する記述は、以下の一次資料に照らして確認しています。

  1. PubMed Central (NIH)pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5573908
  2. PubMed Central (NIH)pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11965027
  3. PubMed Central (NIH)pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8089287

BlueShotでGLP-1管理を始めよう

AIコーチング、注射スケジュール、体重記録をまとめて管理

App StoreGoogle Play
#GLP-1#基礎代謝#安静時代謝率#セマグルチド#ウゴービ#オゼンピック#マンジャロ#リバウンド#筋肉量#体組成#メディカルダイエット#肥満症#体重管理
共有

関連記事