ウゴービを火曜に打って、ようやく胃が落ち着いてきた金曜。退勤間際、デスクで「ふー」と一息ついた瞬間に、上司が振ってきます。「今日さ、ちょっと飲みに行かない?」
これが、断れたら苦労しないんですよね。日本の職場って、飲み会を何度か断ると空気が変わりはじめる。「最近付き合い悪くない?」が、そのうち噂になる。GLP-1を打ってること自体、わざわざ話したい人はほとんどいない。話したところで、ちゃんと伝わるかもあやしい。
そもそもGLP-1を打つと、食欲がガクッと落ちます。セマグルチドの短期メカニズム試験では、自由に食べたときのエネルギー摂取量がプラセボ比でおよそ 35% 低かったそうです(STEP 1とは別の試験)。実生活でも「1日あたり数百kcalくらい少なく食べるようになった」という声が多い。その状態で居酒屋に座ると、2品目でもう箸が止まる。「あ、もう入らない」と小声でつぶやく自分に苦笑い。ビール1杯目で顔は真っ赤。周りはとっくに3杯目のハイボールです。
ここで書きたいのは、薬をやめる話でも飲み会を断る話でもありません。打ちながら、日本の外食と社交をどう回すか。居酒屋からランチ、接待、家族の食事まで、具体的にいきます。
飲み会のメニュー選び — 居酒屋で何を頼むか
居酒屋のメニューは、GLP-1と相性がいいものと悪いものがはっきり分かれます。
先に食べるもの(最初の 60分):
- 刺身の盛り合わせ: タンパク質が高く脂質が少ない。マグロ赤身
5切れで約15g - 焼き鳥(もも・むね・砂肝): 皮なしで頼めば1本
7–8gのタンパク質。3本で20g超 - 冷奴: 半丁で
10g。薬味のネギと生姜が胃をなだめる - 枝豆:
100gで11g。ゆっくり食べられるのも利点 - 卵焼き/だし巻き:
2切れで7g前後
避けるか後回しにするもの:
- 唐揚げ・天ぷら: 脂質が胃排出をさらに遅らせる。打って
72時間以内は悪心が出やすくなる - 串カツ・とんかつ: 同じ理由。衣の油が胃に重い
- ポテトサラダ・ポテトフライ: 炭水化物と脂質のダブルで、少量でも膨満感がくる
- ラーメン(シメ): GLP-1で胃排出が遅い状態で豚骨スープは最悪の組み合わせ
| 居酒屋メニュー | タンパク質 | 脂質 | GLP-1との相性 |
|---|---|---|---|
| 刺身盛り合わせ(5切) | 約15g | 低 | ◎ |
| 焼き鳥もも(皮なし)3本 | 約22g | 中 | ◎ |
| 冷奴(半丁) | 約10g | 低 | ◎ |
| 枝豆(100g) | 約11g | 低 | ○ |
| 唐揚げ(3個) | 約18g | 高 | × |
| 天ぷら盛り合わせ | 約12g | 高 | × |
| シメのラーメン | 約8g | 高 | × |
居酒屋の前半で タンパク質30g を押さえておけば、夕食分としては十分。あとの席時間は枝豆をつまんで水を飲んでいれば、見た目もまったく不自然じゃありません。これ、意外と書かれてないんですが、GLP-1中の飲み会は「最初の60分で勝負を決める」のが鉄則です。
お酒とGLP-1 — 酔い方が変わる
飲み会でいちばん気をつけたいのが、ここです。
GLP-1は胃の中身を出すスピードを遅らせます。すると、アルコールの吸収タイミングもずれる。だから 酔いの出方が普段と違う と感じる人が多いんです。ただ、この「酔いやすくなった気がする」感覚の正確なしくみは、きちんとした薬物動態の試験ではまだはっきりしていません。胃排出の遅れや体の水分減少が関係してるんじゃないか、という仮説の段階です。
別の角度の話もあります。GLP-1受容体は脳の報酬系にもあって、お酒そのものへの欲求が変わるかもしれない、という指摘です。小規模なランダム化比較試験(Hendershot et al., JAMA Psychiatry 2025、n=48、9週間)では、セマグルチドで飲酒量と渇望が減ったとのこと。とはいえ規模が小さいので、はっきり言い切るにはもっと大きな試験が要ります。
実際、どうなるか。
- ビール
1杯で以前の2杯分くらい酔う感覚が出る人がいる - 翌朝の悪心が、GLP-1の副作用と二日酔いのダブルで来る
- 日本酒やワインの糖質が、少量でも胃のもたれにつながりやすい
「ウゴービを始めてから、ハイボール
2杯でもう十分になった。以前は5杯飲んでも平気だったのに。翌朝の気持ち悪さが、薬の副作用なのか二日酔いなのかわからないのがいちばん困る」(30代男性、ウゴービ4ヶ月)
飲み会での現実的なルール:
- 最初の
1杯は乾杯用に普通に飲む。断ると面倒なので 2杯目からはハイボール(糖質ほぼゼロ)か、ウーロンハイにする1杯ごとに水かお茶を1杯挟む。ペースが自然に落ちる- 日本酒・ワイン・甘いカクテルは糖質が高い。避けられるなら避ける
- 「今日は薬飲んでるから軽めで」——これだけで深追いされないことが多い
「薬飲んでる」と言って、何の薬かまで突っ込んでくる人は、ほぼいません。抗生物質でも風邪薬でも、日本の飲み会では「薬」の一言でだいたい通ります。グラスを少し持ち上げて目で乾杯する仕草を添えれば、それだけで場の空気は崩れません。
ランチ — 定食屋・牛丼チェーン・ラーメン屋をどう使うか
日本のランチは定食文化が根づいてるぶん、実はGLP-1と相性がいい。ネックになるのは量だけです。
定食屋での注文の仕方:
- ごはんを「小盛り」か「半ライス」にする。これだけでカロリーが
150–200kcal減る - 主菜は焼き魚か生姜焼きが無難。天ぷら定食ととんかつ定食は打った週は避ける
- 味噌汁はそのまま飲む。水分と塩分の補給になる
牛丼チェーン(吉野家・松屋・すき家):
意外と使えます。ミニ牛丼(約350kcal)にサラダと味噌汁をつける。タンパク質は 15g 前後。足りなければ卵を追加して +6g。合計 21g で 450kcal 程度に収まります。
ラーメン屋:
ぶっちゃけ、打った翌日から 48時間 はラーメン屋を避けたほうがいい。脂質たっぷりのスープが、排出の遅くなった胃に入ると、悪心が一気に来ます。STEP 1試験での悪心発生率は 44%。脂っこいものを食べたあとに強く出やすい、という報告です。
どうしても行きたいなら、あっさり系の醤油か塩。麺は半分でお願いする。「半分残しちゃうかもしれません」と店員さんに先に伝えておくと、気持ちがだいぶラクになります。チャーシューはタンパク質源としてしっかり食べて、替え玉はなし。
| ランチ先 | おすすめ注文 | タンパク質 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 定食屋 | 焼き魚定食(半ライス) | 約28g | 天ぷら・フライ系は回避 |
| 牛丼チェーン | ミニ牛丼+卵+味噌汁 | 約21g | 特盛・大盛りは無理しない |
| コンビニ | サラダチキン+おにぎり1個+ゆで卵 | 約35g | カップ麺・菓子パンは避ける |
| ラーメン屋 | 醤油/塩ラーメン(麺半分) | 約18g | 打後48h以内は非推奨 |
| そば/うどん | 肉そば or 鶏天そば | 約20g | つゆは全部飲まない |
接待・懐石・寿司カウンター
日本のビジネスには、食事を断りにくい場面がもう一つあります。接待です。
ところが懐石料理、これがGLP-1とかなり相性がいい。少量ずつ出てくるし、タンパク質(刺身、焼き物、煮物)が自然に散りばめられている。ごはんは最後にちょこっと。ペース配分まで店側がコントロールしてくれます。
気をつけるのは 2つ だけ。
- 天ぷら・揚げ物の椀が出たら、衣を外して中身だけ食べる。不自然に見えないように箸で少し崩す感じで
- お酒の進め方。接待では「お酌」の文化がまだ残っているので、グラスを空にしないのがコツ。少し残しておけば注がれにくい
寿司カウンターは、刺身メインで組めば理想的なGLP-1食になります。
- シャリを少し残すか、「シャリ少なめで」と板前に頼む(高級店ほど対応してくれる)
- ネタは白身魚、赤身マグロ、エビ、イカが脂質少なめ
- トロ、ウニ、あん肝は脂質が高い。1貫ずつなら問題ないけれど、3貫以上は胃に来る
- ガリ(生姜)は悪心を和らげる方向に働く。遠慮なく食べていい
「寿司カウンターの接待が月
2回あるんですが、ウゴービを始めてからは8貫で限界。以前は15貫食べてた。板前さんに『今日は少なめで』って言うのが最初は気まずかったけど、3回目からは慣れました」(50代男性、営業職)
家族の集まり — お正月・お盆・義母の手料理
家族の食事がやっかいなのは、「残す」ことへの罪悪感です。お皿に三分の一だけ残ったおかずを見て、こっそりため息。とくに義理の家族の手料理を残すと、関係にヒビが入りかねない。ここが地味にしんどいところです。
使えるフレーズ:
- 「すごく美味しいんですけど、最近胃の調子が悪くて少しずつしか食べられなくて」
- 「薬の関係でちょっと食が細くなっていて」(嘘ではない)
- 「あとでまた少しいただきますね」(時間を置いて少量食べる)
お正月のおせちは意外とGLP-1向きの食材が多いです。
- 数の子、えび、かまぼこ、田作り: タンパク質が高い
- 黒豆: 植物性タンパク質
100gあたり約8g - 昆布巻き、煮しめ: 食物繊維と水分が取れる
- お雑煮: 餅は
1個にして、鶏肉と三つ葉を多めに
気をつけたいのは 伊達巻の食べすぎ(砂糖が多い)と 栗きんとん(ほぼ糖質の塊)くらい。おせちは全体として少量多品目なので、GLP-1中の食べ方とよく合います。
お盆の帰省で出てくるそうめんは定番ですが、タンパク質がほぼゼロ。冷しゃぶサラダを一品足すか、ツナ缶を乗せるだけで、バランスがぜんぜん変わります。
デート — コース料理と「食べ残し」のプレッシャー
デートは悩ましいんですよね。相手に心配されたくないし、かといって無理して食べて、悪心でデートそのものを台無しにもしたくない。
イタリアン・フレンチのコースで使える戦略:
- アミューズと前菜はそのまま食べる(量が少ないので大丈夫)
- パスタは半量が理想。「シェアしませんか?」が自然な口実になる
- メインの肉・魚はタンパク質源なので優先して食べきる
- デザートは「コーヒーだけにしようかな」で通る場面が多い
- パンは
1切れで止める。GLP-1で満腹信号が早い状態でパンを食べると、メインが入らなくなる
食べ残しへの対応は、レストランの格で変わります。カジュアルなビストロなら持ち帰りを頼んでもいい。高級店ではコースの量が元から少ないので、残す場面自体が発生しにくい。テーブルの向かいで相手がデザートを楽しんでいるあいだ、こちらはコーヒーをゆっくり啜る、くらいの間が一番自然です。
相手にGLP-1のことを伝えるかどうかは、関係性の深さ次第です。「最近ちょっと胃が弱くて、少食なんだよね」で十分。深掘りされなければそれ以上説明しなくていいし、聞かれても「薬の影響で」までで問題ありません。
タンパク質1.2g/kg — 外食でも崩さない設計
外食が続くと、タンパク質の管理がついつい雑になります。減量中のタンパク質の目安は 1.2–1.6g/kg/日(Hector & Phillips, Int J Sport Nutr Exerc Metab 2018。肥満治療の臨床で広く使われる推奨値)。これを下回る日が増えるほど、筋肉の目減りは加速します。
しかもGLP-1で落ちた体重の およそ30–40% は除脂肪量、つまり筋肉・水分・グリコーゲンだという報告があります(STEP 1 DXAサブ解析、レジスタンス運動を併用しない場合)。10kg 落ちたら、3–4kg 前後は除脂肪量という計算です。タンパク質を意識しないでいると、この比率がさらに上がって、筋力低下や代謝の落ち込みにつながります。
1日のタンパク質を外食込みで 80g 確保する例(体重65kgの場合):
- 朝: プロテインシェイク
1杯(20g) + ゆで卵1個(6g) =26g - 昼(外食): 焼き魚定食(半ライス) =
28g - 夜(居酒屋): 刺身 + 焼き鳥
3本+ 冷奴 =30g前後 - 合計:
84g(1.3g/kg)
朝にプロテインシェイクを 1杯 挟むだけで、外食の自由度がぐっと上がります。日本のAmazonや薬局で買えるホエイプロテインは 1スクープ20g 前後。3,000–5,000円/kg が2026年の相場です。
「外食ばかりの週はタンパク質が
50g切ってた。プロテインシェイクを朝に入れてから、平均85gまで戻せた」(40代女性、マンジャロ3ヶ月)
悪心がきつい日の外食 — キャンセルする勇気とプランB
打った翌日の 48–72時間 が、悪心のピークです。セマグルチド 2.4mg で 44%、チルゼパチド 15mg で 31% の人が悪心を経験します(STEP 1 / SURMOUNT-1)。けっこうな割合ですよね。
この時期に飲み会や外食の予定がかぶったら、打てる手は3つあります。
A. 打つ曜日を調整する
飲み会が金曜に多いなら、注射を月曜か火曜にずらす。72時間 後には悪心が落ち着いていることが多い。週1注射の曜日は主治医と相談すれば変更できます。
B. 予定をキャンセルしても問題ない場面を見極める 体調が理由のキャンセルは、日本でも受け入れられやすくなっています。「ちょっと胃の調子が悪くて」のLINEで済む場面は、無理に行かなくていいです。
C. 行くけど食べ方を限定する 温かいお茶やスープ系を中心に、固形物は少量。冷奴、茶碗蒸し、雑炊、卵豆腐。「温かい・柔らかい・薄味」の3条件に合うものだけ選ぶ。
悪心を悪化させる3大トリガーは 脂質の多い料理、1食の食べすぎ、炭酸飲料 です。居酒屋で唐揚げとビールを一気にやるのは、この3つを同時に踏み抜く行為。翌朝ひどい吐き気で「やっちまった」と後悔するのは、だいたいこのパターンです。
飲み会で聞かれたときの返し方
GLP-1を打っていることを全員に知られたいわけじゃない。でも「なんで食べないの?」「ダイエット?」「お酒弱くなった?」は必ず聞かれます。
こう返せば大丈夫:
| 聞かれ方 | 返し方の例 |
|---|---|
| 「食べないの?」 | 「昼ごはんが遅かったからまだお腹いっぱいで」 |
| 「ダイエット?」 | 「まぁちょっとね。でも普通に食べてるよ」 |
| 「お酒弱くなった?」 | 「体質変わったみたいで。最近すぐ回るんだよね」 |
| 「体調悪いの?」 | 「胃の調子がちょっとだけ。大丈夫だよ」 |
| 「もっと飲めよ」 | 「今日は水割りペースで。次回がんばるよ」 |
コツは深刻にしないこと。「あー、まあね」と苦笑混じりに肩をすくめれば、相手もそれ以上は聞いてきません。
日本のGLP-1処方事情と費用 — 2026年春の現在地
外食の話から少しだけ脇道へ。GLP-1の費用と保険適用は、結局のところ食事の組み立て方にも効いてくるので、ここで整理しておきます。
- ウゴービ(セマグルチド
2.4mg、週1注射): 日本で2023年に肥満症の適応を承認取得(薬価収載・発売は2024年2月)。保険適用はBMI 35以上、またはBMI 27以上で肥満に関連する健康障害が2つ以上。自由診療で月3–7万円 - ゼップバウンド(チルゼパチド、週1注射): チルゼパチドの肥満症ブランドとして2024年12月にPMDA承認。マンジャロは同じチルゼパチドでも2型糖尿病のみの適応で、肥満症には使えません。ダイエットでマンジャロを使う場合はオフラベルの自由診療
- リベルサス(セマグルチド、経口): 糖尿病で保険適用。ダイエット目的は自由診療で月
1–3万円が相場
月 5万円 払いながら、外食で「何を食べるか」を間違えて筋肉を減らす。これ、なかなかもったいない話です。だからこそ外食でもタンパク質 1.2g/kg を意識する価値があります。
ウゴービの保険適用条件を満たしていて、肥満外来で処方を受けているなら、月 1–2万円 前後で収まることが多い。どちらの場合でも、食事の原則は変わりません。
二次会・三次会 — いつ帰るかの判断基準
日本の飲み会は、二次会、三次会まで延々と続くことがあります。GLP-1を使ってるなら、撤退ラインの引き方はシンプルです。
- 一次会: 参加する。前半でタンパク質を確保して、後半は水とつまみで流す
- 二次会: 行くなら
30分で切り上げる口実を用意しておく。「ちょっと顔だけ出します」 - 三次会: 行かない。体調を理由にしていい場面
二次会がカラオケなら、飲み物はウーロン茶かジンジャーエールでしのぐ。バーなら炭酸水かストレートのウイスキーを少量。甘いカクテルとビールの追加注文は胃への負担が大きい。
翌日が休みでも油断は禁物。GLP-1の副作用は、しっかり土日に回ってきます。金曜の深酒は、土曜の悪心をきっちり悪化させます。
打つ曜日と外食カレンダーの組み方
ここまで読んで、もう気づいた人もいるはず。外食の多い曜日から逆算して、注射の曜日を決める。これが、いちばん効く対策です。
- 飲み会が金曜に多い → 月曜か火曜に打つ
- 週末にデートや家族の食事が多い → 水曜か木曜に打つ
- 接待が不定期 → 悪心が最も少ない曜日(打って
4–5日目)に合わせる
注射の曜日は、主治医と相談すれば柔軟に動かせます。週1回製剤は、前回からある程度の間隔(目安として48時間以上)をあければ曜日をずらせる。極端に詰めなければ、変更は可能です。具体的な間隔は、使っている薬の添付文書と主治医の指示に従ってください。ただし毎週バラバラにするのはNG。ある程度固定して、社交カレンダーに合わせる。これがベストです。
この曜日設計だけで「悪心が体感で半分以下になった」という声、けっこう多いんです。薬の効き方そのものが変わるわけじゃない。副作用のピークと社交のタイミングを、うまくずらしてるだけ。これ、案外どのガイドにも書かれてない地味な工夫です。
よくある質問
Q. GLP-1を使っていることを職場に言わなきゃダメ?
言う義務はありません。そもそも治療の中身を職場に申告する義務はないです。「薬を飲んでいるので」の一言で十分。ただし、低血糖リスクのある併用薬(SU剤、インスリン)を使っているなら、隣の同僚に「ブドウ糖タブレット 15g をデスクに置いてあるから、もし具合悪そうだったら渡して」くらいは伝えておくと安心です。
Q. ウゴービを打った日に飲み会が入った。キャンセルすべき?
打った当日なら、悪心はまだ来ていないことが多い。問題は翌日以降。当日の飲み会なら、脂質の少ないメニューとアルコール 1–2杯 で乗り切れる場合が多いです。翌日以降の飲み会は、自分の副作用パターンを 2–3週 観察してから判断してください。
Q. 接待で日本酒を勧められたら?
「ちょっと胃の調子が」で通ります。それでも勧められたら、おちょこ1杯 だけ受けて、あとはウーロン茶に切り替え。接待の相手は自分のお酒の量よりも、会話の質を気にしています。
Q. GLP-1でアルコール依存症が改善するって本当?
小規模なランダム化比較試験(Hendershot et al., JAMA Psychiatry 2025、n=48、9週間)で、セマグルチドが飲酒量と渇望を減らしたという報告があります。ただし規模が小さく確定的ではなく、これはGLP-1のオフラベル効果であって、アルコール依存症の治療薬として承認されているわけではありません。飲酒量の変化が気になるなら、主治医に相談してください。
Q. 二日酔いがGLP-1の副作用と区別つかない
これ、本当によく聞く話です。区別がつかなくても、対処法は同じ。水分 500mL 以上、電解質(OS-1やスポーツドリンク)、温かいスープ。固形物は無理に入れない。翌朝はプロテインシェイクだけにして、昼から普通食に戻す。48時間 以上続くようなら、主治医に連絡を。
外食は、日本の社交のど真ん中にあります。GLP-1を始めたからといって、飲み会もランチも接待も全部やめる、なんて必要はまったくありません。
押さえることはシンプルです。打つ曜日を社交カレンダーに合わせる。居酒屋では最初の 60分 でタンパク質を確保する。アルコールはできるだけ控えめにする。この3つさえ握っておけば、たいていの場面は静かに切り抜けられます。適量は人によって大きく変わりますし、脱水や悪心、(SU剤やインスリンを併用している場合は)低血糖のリスクもあります。不安があれば、迷わず主治医に相談してください。
食事の組み立てをもっと詳しく知りたい人は GLP-1治療中の食事ガイド を、アルコールとの付き合い方は GLP-1とアルコールのガイド をどうぞ。筋肉の維持が気になるなら GLP-1と筋肉の減少を追う記事 も参考になるはずです。
出典
- STEP 1 (NEJM 2021, Wilding et al.) — セマグルチド 2.4mg、68週で平均体重変化 約−14.9%、悪心 約44%、嘔吐 約25%。除脂肪量はDXAサブ解析で減量分のおよそ30–40%
- SURMOUNT-1 (NEJM 2022, Jastreboff et al.) — チルゼパチド、72週で平均体重変化 −15.0/−19.5/−20.9%(5/10/15mg)。悪心 24.6/33.3/31.0%(用量別)
- セマグルチドの自由摂取エネルギー試験 — プラセボ比でエネルギー摂取量 約35%低下(STEP 1とは別の短期メカニズム試験)
- Hendershot et al. (JAMA Psychiatry 2025) — 小規模RCT(n=48、9週間)。セマグルチドで飲酒量・渇望が減少
- Hector & Phillips (Int J Sport Nutr Exerc Metab 2018) — 減量中のタンパク質 1.2–1.6g/kg/日
- PMDA: ウゴービ皮下注(肥満症、2023年承認取得・薬価収載2024-02)、ゼップバウンド皮下注(肥満症、2024年12月承認)、マンジャロ皮下注(2型糖尿病)
- 日本肥満学会 肥満症治療ガイドライン 2022
GLP-1薬はすべて処方薬です。服用・注射の開始や中止は、必ず主治医と相談のうえで進めてください。効果や副作用には個人差があります。最新の添付文書はPMDAサイトで確認できます。
参考文献
本記事の事実に関する記述は、以下の一次資料に照らして確認しています。
- PubMed Central (NIH)pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9542252
- PubMed Central (NIH)pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11965027
- PubMed (NIH)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26803805



